表紙絵が優しすぎるが、2020年版。
女性作家のエッセイは、相変わらず切れが良い。
しかし、高橋源一郎氏『幻の女』がよくできた話だった。
Aという真面目な作家が、伝言ダイヤルで銀座のクラブの女と知り合うが、
突然、女は行方をくらまし、知り合った資生堂パーラーもそのクラブも
跡形もなく消えてしまっていた、という話。
懇意になった女が跡形もなく消えてしまった話はほかにも
ふたりから聞いているそうで・・・・
この話の何がよかったかと言えば、
現実には謎なんてものはなくて、気のせいであり、
夢のようなことであったとしても過去は過去、
前を向いて気持ちを切り替えたほうがよいことは、
たくさん思い当たるなあと感じられたこと。
それとA氏の体験がスピード感のある文章で描かれていたこと。
2020年版も故人をしのぶエッセイは多かった。
それも過去のこととして
前を向いたほうがよい気もする。